【白帝城】蜀の劉備が息を引き取った長江に浮かぶ古城の美しさと郷愁
荊州
日本でも人気の高い魏・呉・蜀の三国が覇権を争った三国時代(220年~280年)、重慶は荊州に属しました。
荊州は現在の重慶や湖南省、湖北省、四川などにまたがった大きな州でした。
208年の赤壁の戦いの後、荊州北部の南陽郡と南部は曹操が統治し、中南部は劉備と孫権によって統括されました。
そのうち南部・零陵・武陵(現在の重慶)は劉備の興した蜀に属しました。
荊州と言えば後漢(219年)に劉備軍の関羽と曹操軍の曹仁・于禁・徐晃、孫権軍の呂蒙・陸遜が争った樊城の戦いが有名です。
樊城は現在の湖北省に位置し、当時の城の一部が保全されており、悪政に立ち向かった関羽の雄姿と三国間の壮絶な戦いの跡を今に残します。
蜀の都の成都からそう遠くない(車で2時間掛かりますが広大な中国では近い部類に入ります(^^;)重慶一体でも蜀と他国との間でいくつもの戦が繰り広げられました。
現在の重慶の中心部も以前は城壁に囲まれていました。
重慶の三国時代を語る上で欠かせないのが、蜀の名軍師諸葛孔明が考案したとされる石兵八陣(せきへいはちじん)と、劉備が亡くなった白帝城(はくていじょう)です。
簡単に歴史を紹介して行きましょう。
夷陵の戦い
白帝城は現在の重慶市奉節県の長江三峡に位置し、後漢に公孫述によって築城されました。
劉備は221年に即位し、成都を都として蜀を興しました。
しかし同年6月、義兄弟の張飛が部下に懲罰として鞭打ちを与え、反感を買い、就寝中に殺害される事件が起こりました。
部下は張飛の首をもって隣国の呉に逃走しました。
そして翌年の222年、劉備は軍を挙げ呉に侵攻します。
これが単純に劉備の感情に任せた張飛の弔い合戦だったのか、張飛の死を口実とした戦略的な侵攻だったのか否かという点ですが、後の諸葛亮の行動から突発的で計画性に乏しい戦であったことが伺えます。
呉の孫権は始め講和を促し、強国である魏にともに対抗するべきだと主張しましたが劉備は聞く耳を持たず、夷陵の戦いが勃発しました。
劉備自ら率いる蜀軍(一説には4万人)は陸軍・水軍を駆使して呉の統治する長江一帯に攻め込みます。
呉は年齢を重ねた歴戦の猛将が多く、水軍の利用に長けていました。
しかしこの時呉軍の軍師に任命されたのは実戦経験の浅い陸遜でした。
当初陸遜への不信感から呉軍の将軍達は作戦を指示通りに遂行せず、団結に欠けました。
結果一説には約5万人いた呉軍は一時壊滅の危機に瀕しました。
そこで聡明な陸遜は機転を利かせ、深夜に水上から蜀の陣営に火矢を射かけ、劉備軍に大損害を与えます。
これを皮切りに信頼を得た陸遜は将軍を巧みに操り蜀の陣を次々に陥落させて行きました。
敗戦が濃厚となった蜀軍は戦力で撤退しますが、途中劉備は呉軍に包囲され窮地に立たされます。
そこで劉備を救い出したのが蜀の名将、趙雲でした。
趙雲の神がかりな武運の下、劉備は蜀の白帝城に逃げ込みました。
呉軍はこの機を逃すまいと執拗に劉備を追いかけ、白帝城に軍を進めようと試みます。
しかしここで、前もって劉備の敗走を予想していた諸葛亮が石兵八陣(巨大な岩々を削ることで、陣の中に流れ込む空気の流れを調節し、時々突風が吹きおこるようにした陣)を構え、白帝城目掛けて攻め込む陸遜を打ち返しました。
これは三国志演義の中の話なので限りなく寓話に近いですが、諸葛亮が劉備の敗走を見越していたという記述から、初めから戦に反対だった様子が伺えます。
その後劉備は白帝城を永安城に改名し、223年に永安城で息を引き取りました。
そして蜀は263年に魏によって滅ぼされました。
白帝城
現在の白帝城は周辺のダム開発の影響から城の周囲が冠水し、長江の中にポツンと浮かぶ世にも珍しい城となっています。
白帝城を含む白帝城風景区はAAAA級観光地に認定されています。
城自体はそれほど大きくありませんが、劉備が兄弟の死と敗戦を経験した後、失意の日々を過ごし、蜀の未来を憂いながら病に瀕し息を引き取った城だと思うと切なさがこみ上げてきます。
水面に浮かぶ山城は幻想的ですが、どこか郷愁を誘うのはそうした歴史背景からでしょうか。
三国志ファンの方なら、劉備の最後の時を看取った白帝城を一度訪れてみては如何でしょうか。
アクセス
重慶の北西部、奉节(フォンジエ)県の白帝山にかまえる白帝城には、重慶中心部から車で高速を使っておよそ5時間程です。
長江クルーズを利用する方法もあります。
決してアクセスは良くありませんが、その分白帝城を目の当たりにした時の感動も一押しです。
営業日:月~日(祝日含む)
営業時間:午前7:00~17:00
チケット料金(白帝城と瞿塘峡景区セット):
ピークシーズン(3月-10月)⇒ 100元
オフシーズン(11月-2月)⇒ 60元
観光時間の目安:4時間
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