【中華の定番・鶏とカシューナッツ炒め】は実は豪華宮廷の味?
宫保鸡丁
宫保鸡丁(ゴンバオジーディン)は鶏肉をピーナッツ又はカシューナッツと炒めた四川料理です。
四川のみならず山東省や貴州省でも似た料理が親しまれています。
また宫保鸡丁は英語ではKung Pao Chickenと呼ばれ、中国国外でも一定の知名度を得ている中華料理です。
宫保鸡丁の”丁”とは”さいの目に切る”ことを指します。
”宫保“の名前は清の時代の末期の官僚の丁宝桢(ディンバオジェン)に由来します。
ここでは有名な説を二つ紹介します。
名前の由来①
1820年に現在の貴州省に生を受けた丁宝桢は、湖南省岳州や長沙の知府を歴任しました。
彼は大の料理好きとして知られ、自ら料理を考案する他、専属の料理人も雇っていました。
丁宝桢の出身の湖南省では四川や重慶と同様に辛い味付けが好まれ、湖南火鍋が有名です。
もちろん丁宝桢も辛い物は大好物でした。また特に鶏肉やピーナッツを好んで食べていました。
ある日彼がまだ山東省の役人だった頃に、彼の料理人がよく作っていた湖南省料理の”酱爆鸡丁”にふと箸を止め考えました。
(酱爆鸡丁とはさいの目に切った鶏肉を甜麵醬と胡椒で炒めた料理で、”爆”とは”高温で短時間でさっと炒める”調理法を表します)
丁宝桢はこの甘い鶏料理をより自分好みの辛い味付けに改良し、大好物のピーナッツも加えるように料理人に注文しました。
以後丁宝桢家ではこの特別な酱爆鸡丁が食卓に並ぶようになりました。
1877年には丁宝桢は大出世し、四川総督に任じられました。
有名になった丁宝桢の家庭料理の酱爆鸡丁(丁宝桢スペシャル)は次第に世間でも知られるようになりました。
”宫保”とは蜀の地を10年間に渡って統治した丁宝桢に与えられた称号を指し、彼の功績を称えて宫保鸡丁という料理名が付けられたというのが一説です。
名前の由来②
二つ目の説は丁宝桢が山東省の役人だった頃のお話し。
ある日、丁宝桢は山東省済南の大明湖を仕事で訪問していました。
正午になって彼がお腹を空かせて歩いていると、一軒の家からかぐわしい香りが漂ってきました。
丁宝桢は家の庭で調理されている鶏料理を見つけると、家の主に対してこれは何の料理なのか、どうやって作るのかを熱心に尋ねました。
そして大の料理好きの(ただ空腹だった)丁宝桢は主に頼み込んでその鶏料理を一口食べさせてもらうと、おいしさに言葉を失いました。
この料理は爆炒鸡丁にピーナッツを入れた家の主のオリジナル料理でした。
丁宝桢は帰路に着いてからもその味が忘れられず、なんと家の主を料理人として雇いました。
そして供に料理研究を重ね、丁宝桢が四川に赴任になった際には爆炒鸡丁で使っていた胡椒を四川で親しまれる唐辛子に変えて、現在の宫保鸡丁が完成しました。
四川の人々は彼に敬意を表して、宫保の名を料理名に付けたという言い伝えです。
レシピ
一般的な材料は鶏胸肉・ピーナッツ・ネギ・生姜・唐辛子・花椒・サラダ油・塩・料理酒・味の素・醤油・砂糖・お酢・水溶き片栗粉です。
まず胸肉をサイコロ上に切り、塩を振って料理酒・サラダ油・水溶き片栗粉に10分間ほど漬け込みます。
ネギは3~5㎝に輪切りにします(さいの目上のキュウリやピーマンを使うこともあります)。
小さいボウルで醤油・お酢・塩・生姜・砂糖・料理酒をよく混ぜておきます。
下準備が終わったら次に中華鍋で唐辛子と花椒を軽く炒め、香りが立ったら輪切りにしたネギを入れます。
頃合いを見て漬け込んでいた鶏肉を鍋に入れて、”爆”、揚げるような高温でさっと炒めます。
次に調味料を回しかけ、ピーナッツを加えます。
最後に鶏とネギに味が染みたら水溶き片栗粉を加えてとろみをつけて完成です。
特徴
カラっと炒められた鶏肉に美味しそうなソースがまとわりつき、唐辛子の赤色とネギやキュウリの緑色とのコントラストが美しく、非常に食欲をそそる見た目です。
調理中からタレのかぐわしい香りが広がり、丁宝桢が他人の家に引き寄せられる姿が目に浮かびます。。。
さいの目上の鶏肉はつまみやすく、甘酸っぱいタレが後を引きます。
タレのよく染みたネギとピーナッツが良いアクセントとなり、食べ進めても飽きの来ない味に仕上がっています。
ピーナッツの代わりにカシューナッツを入れることもあり、これまた鶏肉とよく合います。
酢豚とも似ていますが、唐辛子や花椒の刺激的な風味がクセになります。
とってもご飯が進む味付けです。
重慶でも宫保鸡丁は定番料理のひとつで、家庭的な小さな食堂から大きなレストランまで幅広く浸透しています。
お店独自のタレや食材に出会うのも面白く、宫保鸡丁の奥深さに感心します。
重慶旅行の際は昼食や夕食に一品宫保鸡丁をオーダーして、お店ごとの特徴を比較してみるのも良いですね。
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