【重慶の激辛焼魚料理】炭火で炙った川魚とスパイシーな味付けがクセになる
重慶焼魚(チョンチン カオユー)
重庆烤鱼(日本の漢字を使用すると重慶焼魚)は重慶の万州の伝統料理です。グリルされた川魚を唐辛子がたっぷり入った鍋で煮た見た目にも鮮やかな料理です。
歴史は遡ること清の末期、重慶には叶天奇(イェティエンチー)という有名なシェフを先祖に持つ叶家がありました。
叶一族は女性には料理の才覚が無いと考えたため、代々叶家の男性にのみ調理技術や秘伝のレシピを幼少期から伝授してきました。
そのため女性陣は家事に専念し、叶家の普段の家庭料理を担当して来ました。
叶家は毎年春節(旧正月)には重慶の山間の空気が澄んでいて眺めの良いところに赴き、そこでお客さんをもてなす春節の料理(日本のおせちの位置づけ)を作っていました。
転機
しかしある年の春節の日、叶家の男性シェフは病に伏してしまい、料理をすることが出来ませんでした。仕方なく彼の娘に普段作っている簡単な家庭料理で良いので、お客さんをもてなすように頼みました。
すると娘はなんとお客さんも大満足の素晴らしい料理の数々を作って見せました。これは彼女が常日頃から男性陣の調理風景を密かに見て学び、陰ながら料理研究に勤しんだ結果でした。
彼女が作った多くの料理の中でも特に目に留まったのがストーブにかけられた魚の煮物(のちの重庆烤鱼)であり、その独創的な味・香り・見た目から叶家のレシピの中に加えられました。
その後
これ以降は女性にも豊かな料理の才能があることが認められ、叶家の女性にも代々料理が伝授されるようになりました。
娘は1920年に重慶ではこれまた料理の名門の韓(ハン)家に嫁ぎ、地方公邸の料理人として長く働きました。
韓家は特にグリルやBBQなどの料理法に富んでいました。そして彼女は叶家で培った発想や調理技術と韓家の料理法を融合し、重庆烤鱼は更なる進化を遂げて行きました。
彼女の料理人として日の当たらない幼少期から人知れぬ努力を重ねる姿と、チャンスが来た時には実力を存分に発揮する力には大変感心します。
もしかしたら彼女の努力と実力をこっそり知っていたシェフが、春節の大舞台で料理する機会を与えたのかもしれませんね。
魚の選別
重庆烤鱼にはふつう川魚が使われます。二つの河川が合流する重慶では古くから漁業は盛んでしたが、川魚は小骨が多く臭みも強いためこれといった調理法は確立されていませんでした。
海から遠い重慶では新鮮な海の魚を食べる機会はなく、魚の人気は肉と比べてそれほど高く無かったと云います。そうした背景からも叶家の女性が発明した重庆烤鱼は画期的でした。
重庆烤鱼にはティラピア(淡水魚・スズキ目カワスズメ科)がよく使われます。理由はティラピアは川魚のわりには臭みが無く、それなりの大きさに成長するからです。
普通川魚の肝は臭みが強烈なため、腹から開かずに、丸ごと揚げたり、可食部の背中やお腹の部分の身のみを調理に使うのが常識です。
ティラピアも臭みが少ないとはいえ、肝は普通に調理しては臭みが強く食べられません。そこで重庆烤鱼ではティラピアをお腹から開いて肝を取り出した上で、しっかりと下味を付けてから炭火で焼きます。
レシピ
魚の下味には生姜・ニンニク・青ネギ・パクチー・クミン・クレソンなどを使い、臭みを消します。そうしてこんがり両面焼いた魚をスープの入った鍋にかけます。
スープには生醤油・老醤油・ネギ・ピクルス・レモン・塩・鶏ガラ・唐辛子粉・クレソンなどが使われます。
魚が良く煮えたら準備完了です。
鍋の中で魚を箸でつついて身をつまみ、熱々に煮えたぎるスープに魚の身を浸して口に運べば、炭火でこんがり焼かれた魚にレモンの酸味と唐辛子の辛みが効いたスープが纏わりつき口いっぱいに幸せが広がります。
少し酸っぱくて辛い味は後を引き、病みつきになります。
魚の他にも野菜を注文するのが定番で、レタスやもやし、キノコ、じゃがいもなど好みの野菜を煮て食べます。魚の旨味が溶け出したスープに浸った野菜は絶品です。
人気と研究
重慶には重庆烤鱼の専門店がたくさんあり、中国全土に広がるほど人気の重慶料理です。お店では魚の種類や大きさを指定することが可能で、スープも数種類あります。
重庆烤鱼はその人気ぶりから、その美味しさは一体どこから来るのかも研究もなされました。なんでも魚を焼いた時の焦げ目から出る旨味成分がカギだそうです。
また三国志演技の中では、当時重慶が属した蜀の宴会で出された焼魚を劉備・関羽・張飛が大層気に入り、後に”諸葛烤鱼”の名前を付けて蜀のレシピに追加されたと伝えられています。
ぜひ重庆に来た時には、小骨に気を付けながら、吹き出る汗をフキフキしながら重庆烤鱼を堪能してください!
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