【本場重慶のシビ辛麻辣(マーラー)火鍋】中国四川の奥地で生まれた火鍋の美味しさの秘密と歴史

2024年12月3日火鍋

火鍋

そもそも火鍋とは広義に中国の鍋料理全般を指します。

広大な中国国内にはいくつかの系統があり、代表的なものとしては中国北方の北京火鍋・河南火鍋、南方の湖南火鍋、四川の川味火鍋、貴州の貴州火鍋などが挙げられます。

その土地土地の風土に根差した食材を使って調理されます。

わかりやすい例では内モンゴル自治区の蒙古火鍋で、名物の羊肉を使います。
日本では羊しゃぶしゃぶとも呼ばれます。

火鍋は地域によってスープの味付けは異なり、すべての火鍋が辛いというわけではありません

よく日本では、”火を噴くくらい辛いから火鍋”だと勘違いされますが、単純に”鍋を火にかける”ことから火鍋です。
現に日本の鍋料理も日式火鍋と総称されます。

ただし中国で単に火鍋と言ったとき、最も有名なのが重庆火鍋のため重庆火鍋を意味している可能性が高く、他の地域の火鍋には前述の通り”〇〇火鍋”とフルネームで言うのが通例です。

ですので例えば中国人が「今晩何食べる?」-「火鍋!」となれば多くの場合重庆火鍋を指します(台湾のでは台式火鍋が有名なのでこの例ではありません)。

重庆火鍋をそれほどまでに有名にした理由は後述の衝撃的な痺れ・辛さ・旨味にあります。

名前の由来

重庆火锅は川味火锅の(”川”は四川の意味)部類に入り、中国では重庆火锅(チョンチンフオグオ)や麻辣火锅(マーラーフオグオ)と呼称されます。

”麻”は痺れるという意味で、特に花椒(ホアジャオ)と呼ばれる山椒からくるピリピリとした痺れを指します。
四川の麻婆豆腐でもお馴染みの、舌や唇がピリピリ痺れるあの感覚です。

重慶は花椒が非常に豊富で、形・大きさ・香り・風味・乾燥具合などによって用途が異なり、一つの火鍋には数種類の花椒が使われます。

花椒は重慶料理の肝であり、お隣成都の四川料理と比べてもより多くの種類の花椒をより多くの料理に使用しています。

その独特の香りから初めて体験する人には苦手なことも多く、辛みも重慶料理よりは抑えめの成都の四川料理が早くに日本や世界に広まったのも頷けます。

しかし近年多くの中華料理が世界で知られるようになり、海外でも重庆火鍋を含めた刺激的な花椒の”麻”の味が受け入れられるようになってきました。

日本でもまず四川料理、特に陳シェフが日本人向けに辛さを抑えたものが広まったことで、”麻”の痺れに対する耐性が付き、昨今の重庆火鍋ブームの土台を作ったのだと思います。

一方麻辣の”辣”は唐辛子を指します。重慶の火鍋は数種類の唐辛子をブレンドして作られます。

香りの強い唐辛子、赤色の鮮やかな唐辛子、風味の豊かな唐辛子など本場ともなると種類が違い、それぞれ異なった役割があります。

例えばスープの味付けの段階では旨味や辛みの強いものを使用してしっかりと味を付け、お客さんに出す鍋には色や香りが美しく、辛みの少ない唐辛子を入れたりします。

実際に唐辛子も具材とみなして食べる人も珍しくありません
重慶っ子は小さい頃から唐辛子に慣れているため、唐辛子ををすぐ消化できるように体が進化(?)しているのでしょうか。

健康のため唐辛子を食べることはあまりおすすめしません。。。

重慶火鍋の起源

重庆火鍋の起源には諸説あります。

最も知られているのは、長江の支流の嘉陵江(かりょうこう)と烏江(うこう)が合流し古くは交易の港として栄えた重慶で、船を運ぶ男性たちによって発明された説です。

重慶では長江の上流から物資を運んできた船をまた上流に引き上げる際に、川に浮かべた船にロープを付け、複数の男性が岸を肩でロープを引きながら歩きました

非常に力のいる作業で労力を要し、船を運ぶ男性達は毎日へとへとでした。
しかし金銭的に豊かでない彼らは船の運んできた肉を買う余裕はありませんでした。

そこで目を付けたのが、船が運んできた牛や豚から出た、捨てられるはずの内臓類でした。

不思議がる商人から内臓類を無料で譲り受け、花椒や唐辛子等とともに鍋に入れ火をかけたのが重庆火鍋の始まりとされています。

猛暑で多湿な重慶において、腐敗が早く臭みも強い内臓類を何とか有効活用し、明日の荷物運びの重労働の活力にしようという船乗りの知恵が重慶火鍋を生んだのかも知れません。

次第に商人や一般人の間で、川岸で何やら美味しそうな鍋を作っている男たちの存在が知られるようになり、一度試せば虜になる味からたちまち人気に火が付きました。

元々は質素な具材と調理法だった火鍋は時代を経つにつれ発展を遂げ、現在では重慶の至る所に専門店が立ち並び、およそ2万6千軒もの火鍋店があると言われています。

火鍋レストラン

重庆火鍋のレストランでは席に着くとまずスープを選びます。

麻辣味の他にはキノコベース、魚介だし、清湯、薬膳ベースなどが選択できます。
最近ではトマトベースなどもありますが、重慶ではやはり麻辣味が鉄板です。

鍋が二つに区切られた鴛鍋(おしどり鍋)で二つの味を楽しむことも可能です。

辛さのレベルも指定できます。初めての方には小辣(シアオラー)がおすすめです。

重慶では小辣でも十分に辛いです。
辛さに相当自身のある方は重辣(ジョンラー)を頼みますが勇気が必要です。

具材は多岐に渡り、肉類(牛・豚・鶏・羊・兎・カエル・内臓系・頭・足・脳みそ等)、魚介(白身魚・エビ・イカ・タコ・タウナギ・海藻)、野菜、豆腐、麺類などなど。

具材はよく煮えたスープで煮込み、味が染みたら自分のお椀に取って食べます。

お椀にはごま油とニンニクが入り、お好みで刻んだネギや味の素、砂糖、塩、醤油、ごま、パクチー、唐辛子などを加えます。

ごま油をつけるのは、風味を加える目的の他、熱さと辛さを和らげる効果もあります。
具材をご飯に乗っけて食べるのもありです。

定番の具はランチョンミート(午餐肉)や牛のセンマイ(毛肚)、肉団子(撒尿牛丸:牛の排尿の意味だが実際には入っていない。肉汁があふれ出る様子から命名)や魚団子(魚丸)などです。

特徴

重庆火鍋は牛脂がふんだんに使われていて、味にコクを与えています。
ここが他の都市の火鍋と一線を画している一因でもあります。

重慶では鍋の中が9つに格子状に区切られた九宫格火锅を提供するお店も人気です。

一説には重慶がまだ貧しかった時代、家族や友人と火鍋をつつく習慣は無く、他人と一つの鍋を共用したのが普通でした。
そこで鍋を区切って個人ごとに火鍋を楽しむ形が生まれました。

家族や友人と火鍋を囲むのは当たり前となった現在でも九宫格火锅は健在で、9つのスペースは異なる具材を入れ、具材同士が混ざらないようにするために活用されています。

また重慶では老火鍋と呼ばれる火鍋の種類があります。

老火锅とは一度使用したスープを再加熱し、十分に殺菌処理を行った後にスープの上澄み部分を取り出し長年継ぎ足して使用される火鍋のことです。

様々な具材の旨味が溶け出し、数年では到達できない深みのあるスープが完成します。

重慶を訪れた時には色々な重慶火鍋にチャレンジしてみてください!

2024年12月3日火鍋火鍋

Posted by Shiba Shiba